インフレ連動債のすべてを多角的に解説
本書はHandbook of Inflation Indexed Bonds の翻訳である。監修の米澤教授によると、全22章の内で他の章との重なりが見られる17章及び21章、米国特有の税制・金融商品を扱っている19章及び20章の計4章分を割愛したとの事である。それでも全部で331ページある。それに加えて解説として訳者の一人である陣場氏の「公的年金ALMとインフレ連動資産」があり、日本の読者向けになっている。 まず政策的資産配分を行う場合に、インフレ連動債の組み入れが効率的フロンティアを押し拡げ、実質リターンのみならず名目リターンでも有効である事が、様々な論者によって解説される。章毎に執筆者が異なるので、少しずつ観点が異なり面白い。 またTIAA-CREF(米国の教職員の年金)でインフレ連動債口座を開くまでの具体的検討過程が紹介されている。 「低インフレ下でのインフレヘッジ」の章では、不換紙幣本位制の下ではインフレは避けられず、現在の低インフレは一過性であるのでインフレ連動債は重要であるとしている。 第10章ではインフレリンク債のよりどころとなる指標である消費者物価指数そのものについても詳しく論じられており、上方バイアスがかかる点とその対策を論じている。 第11章の「インフレリスクプレミアムの理解」の章は最も啓発された。インフレリスクについて多くの人がリスク回避的になるので、リスク中立性が成り立たない。そこで行動ファイナンスのプロスペクト理論を用いてインフレリスクプレミアムを算出しているのだ。 12〜16章は英国、オーストラリア、カナダ、米国、フランスにおけるインフレ連動債券の歴史を各国の政策責任者が解説している。各国それぞれ特色があるが、特にフランスでは、かつて金価格連動国債を発行していて金価格の乱高下に悩まされた事も紹介されている。インフレ連動債について後発の米国は、導入にあたって他国の経緯を謙虚に詳しく研究していることもわかった。 その他まだまだ話題があり、知的刺激に富んでいて読み応えがあった。訳注も親切で、例えば「オフ・ザ・ラン銘柄」というような専門用語も訳注で解説してある。 陣場氏の解説「公的年金ALMとインフレ連動資産」は公的年金のために「日本のCPI+α」ファンドを作ろうとする研究であり、数値例も含めて分かりやすく説明してある。
東洋経済新報社
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